走ることが好きだった少年時代
こんにちは。為末 大です。ぼくは子どものころ、よく友だちと外で遊んでいました。『ロビンソン・クルーソー』や『十五少年漂流記』など、冒険の本を読むのも好きでした。小学三年生のとき、母に連れられて陸上クラブに入りました。最初は水泳や体操、空手もやっていたけれど、なんだかしっくりこなくて……。でも、足が速かったからか、陸上はとても楽しかったんです。

世界で初めてのメダル獲得

その後、陸上をがんばりつづけて、世界陸上という大きな大会でメダルをとることができました。エドモントンとヘルシンキという外国の町で、400mハードルという競技に出て、どちらも3位になったんです。
もちろん、うまくいかない日もありました。でも、どこまで速くなれるのか、そのためにいろいろと考えながらやっていくのが本当におもしろかったんです。「もう一回がんばれば、もっと速くなれるかもしれない」と思って、工夫しながら挑戦をつづけました。その気持ちが、ぼくをここまで連れてきてくれたと思っています。
引退してからの新しい挑戦
現役を引退したあと、ぼくはスポーツの楽しさをもっとたくさんの人に伝えたいと思うようになりました。いまは、小学校の体育の授業でハードルを教えたりしています。
だけどね、じつは「ハードルなんて跳びたくない」って思っている子も多いんですよ(笑)。運動が苦手な子もいるし、人に見られたくない。そういう子たちがどうしたら楽しく取り組めるかを工夫しています。自分のことに集中して、他の人が見ていない状況をつくってあげたり。

スポーツで学べること
スポーツって、タイムや記録だけじゃなくて、もっとたくさんのことを教えてくれます。たとえば、人と協力する力、仲直りする力、自分で考えて行動する力。
ぼくはスポーツを通して、「なるべく無駄にならないように、どんなことに力を注げばいいかを考える力」や「ひとつのことに集中する力」を身につけました。そういう力は、大人になってもとても大事なものなんです。
人間らしさってなんだろう?
最近はAIがどんどん進化しています。でも、どんなにAIがすごくなっても、「人間にしかできないこと」ってあると思うんです。意味があるかどうかに関係なく「なんで?」と考える気持ち。「これは大事だ」と思う心。そういうものが、「人間らしさ」なんじゃないかなと、ぼくは思っています。

みんなへのメッセージ

スポーツをやっていると、「今できないこと」が出てくるかもしれません。でも、それは「この先もできない」ということではありません。ぼくは、できなくてもあきらめませんでした。工夫してつづけていれば、ある日できるようになるかもしれない。それを信じることが、いちばん大切だと思います。
これから世界陸上やデフリンピックが開かれます。すごい選手たちが本気でがんばる姿を、ぜひ見てみてください。きっと、何かを感じられると思います。